過ぎてゆく日々



オーストラリアに行っている一番年下の孫娘から手紙が来た。封筒の中に入っているパズルのように、ぱらぱらになっている文面の小片は不定形に分かれ、嵌め絵式の文の文字を組み合わせて手紙を詠む。今の人には新しくないものなのかもしれないが、私には珍しく、二十分も文字あわせをして手紙文を読んだ。英語の力を磨いて、海外旅行に関係の仕事がしたいそうで、試験のある夏には日本に帰るとある。

五人の女の孫もそれぞれ、三十歳前後となり、一人が結婚。二人目が来月結婚する。私は九十歳にもなると、結婚式の出席はどうしたらいいかと考えたが、一つ下の嫁の母親も出席するそうだし、まだ、自分の足で歩けるのだから、華やかな場でのひと時を過すのも楽しみと出席を決めた。



こんなときには、私には女の子がないので、どんな服装をしていったらいいかわからず、亡くなった姉の娘であるもうすぐ七十歳の姪に、何とか私が式に出席できるような格好にして欲しい、と、その面倒を頼む。「もう、人生最後の方なのだから、倹約なんてしないでお洒落しなさいよ」と言われ、なるほどと思う。

四月の半ば、姪の車で玉川高島屋に行った。姉も娘と生前来ていたという、L判の「モリハナエとボーベル」の店に行った。姪は少し前の日に来て下見をしていた。店員は「背中が丸くて、とても太っていて、探しにくい叔母の服」と聞いていたようだが、私を見て「体に合うのが幾つもありますよ」と、安心した様子。眼に付いたのを着てみると、ウエストを直せば大体入りそうだ。幾つか試着したあと薄い紫グレイの首から胸元にかけてひらひらのフリルの付いた、伸縮自在の布の服が一番似合っているように思った。姪もそれが一番良いと言い、スカートの胴回りを直すことにして決めた。かしこまった服を着るので、黒い革靴も買う。

それにしても、九十歳になって、今まで全く縁がないと思っていた森英恵の店で服を買うとは、我ながら驚いている。





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