私の心筋梗塞


平成7年9月、朝起きると、みぞおち(ネクタイの下あたり)がぎゅつと押さえられている感じがあった。なんだか解らないので、午前は近所の会合に出席した。

午後かかりつけの開業医に行った。「心電図に異常ないから大丈夫。薬をあげるから飲んで寝なさい」と言われる。薬は精神安定剤だった。年寄りはこんな症状を訴える人が多いかもしれない、と思いながら薬を飲んだ。

夜になって圧迫されるような痛みがだんだん強くなっていった。夜中の1時、ご迷惑とは思ったが、開業医の先生の自宅に電話した。「もう1度薬を飲んで様子を見たら」と言われ、またベットに入ったが、気がつくと、汗などかいたことが無いのに、全身汗びっしょりになっている。自分でもおかしいと思い、2時ごろ、また先生に電話する。「それでは病院に行かなくては駄目だ。病院と救急車に電話してあげるから。」と言われ、言われるまま玄関で救急車を待った。

大病院に着いてすぐ、名前、住所、年令 など聞かれ、はっきり答えられた。それから病院のどこかへ運ばれた。

気がつくと、衣服は全部脱がされて、裸になって手術台の上にいた。手術室の中では人が動いている。「血管に造影剤を注射するので、体がパッと熱くなりますから」と注意を受ける。右奥のテレビにカテーテルの差し込まれる様子が見える。「もっと右」とか「左」言う声が聞こえる。



終わってICUに運ばれた。次に目を開けるとベットの横に白い塊が2つ。よく見ると白い面会着を着た息子達だった。手術は朝6時頃だったとか。息子たちは心配そうだが、私自身はどうしてだか何の不安もなく、ひたすら気持ちが良い。不思議なくらい穏やかである。何か処置をされたらしい。

3日ほど経って大部屋に移った。私はすぐ担当の先生に心臓がどうなったのか聞いた。
「心臓の40%から45%壊死して、心臓の動脈3本のうち、2本は完全につまり、残りの1本も詰まりかかっています。」と言われた。

後日、同室の方が治療されたように、「ステント」はどうかと先生にお聞きすると、「末端の血管が壊死しているので出来ません」と言われ、本で読むと、新しい血管がまたできるようですが、との問いに対しては「70歳すぎたら期待できません」との返事だった。心筋梗塞としては一番きびしい身障3級となった。

私は狭心症で入院して、病院に入ってから心筋梗塞になったのだそうだ。

この直後、同い年の友人が心筋梗塞で病院をたらい回しにされ手遅れで亡くなった。私は開業医の紹介があり、大病院が近く、心臓の医者が当直で運が良かったと思っている。

それから、8年半、薬は真面目に飲んでいるが、それほど節制もせず、好きな事をして過ごしている。コレステロールは40代からは高かったが、薬を頂いても飲んだり飲まなかったりしていた。前兆としては同年輩の人と旅行しても、すぐ疲れて、一緒の行動が出来なかったことが思い当たる。

又、この経験は8年前のことで今はぐっと治療法が進歩していると思う。

H16/03

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