冷蔵庫


八月の暑い日が続く時、一歳年下の友人Aさんから、冷蔵庫が故障し、ビッグカメラに行った話を聞いた。この品なら今夜すぐ、配達出来ますという百七十九,五センチ大きい冷蔵庫を、その夜、運んでも貰った。Aさんは小柄なので、台を使わなくては上の段には届かないが、あこがれの両開きだし、乾物などを入れるからいいの、と楽しそうだった。

そんな話を聞いた後の九月の半ば、私の家でも急に冷蔵庫が、おかしくなった。冷凍機だけは動いている。製造年月日や寸法を書いた紙が貼ってあり、みると十六年前の製造なので。故障係を呼ばず、新しい製品を買うことにした。 

上に戸棚があるので、新しい品は今までと同じ、百七十四センチ以下のものでなくてはならない。ヤマダ電気にゆくと数多く展示されているが、置き場に入る百七十四センチ以下で、Aさんと同じ両開きを、と思うと、A社とB社の製品二つに絞られた。

A社のものは、一見して中央の、黒い目玉のようなデザインが気に入らなかった。しかし目玉のデザインに因って、使い勝手が良い。Bは、色がシルバーで少し気に入らないが抵抗の無いデザインだった。 

A社のものは五日待ちで入荷、B社のものは二週間待ち、と言われる。まだ暑い日が続く。だからといって、A社のものを買って、デザインに親しめなかったらどうしょう。決断を急に迫られ、結局デザインを優先。B社のものに決め二週間、十月上旬まで待っことにした。

何時も通ってくるヘルパーさんが来たので、今と同じ高さの冷蔵庫の両開きを注文してあることを話す。「そんな大きな冷蔵庫を買われたんですか。家は三人家族でも、もっと小さいので間に合っていますよ」と言う。



数日後、一番年長の孫娘夫婦がぶどう狩り旅行の帰りといって、突然私の家に寄った。葡萄と信玄もちのお土産に、山梨県の名物ほうとうの材料を揃えて来て、夕食にほうとうを作ってくれた。孫娘に今の場所に嵌る新品の冷蔵庫が来るのを待っているところ、と言うと、「一人なんだからもっと小さくて良いように思うけれど」と、言う。 

考えてみると、友人Aさんは、若い頃、飯田深雪さんや柳原俊雄先生の教室に通っていたほど、料理好きだ。今年も、手作りの橙ジャムや、らっきょう漬けの瓶を頂いている。私はいい加減の料理しか作らないのだから、節電にもなるし、もっと小さな冷蔵庫で良かったのかもしれないと少し後悔した。この頃はまだ暑く、食料の保存が難しいので、夕食は配達の日替わり弁当を頼んだ。

十月二日の日曜日、ヤマダ電機が冷蔵庫を運んできた。冷蔵庫を外の運搬車に置いたまま、まず台所にきて、冷蔵庫置き場の寸法を測る。その結果、此処にはこの冷蔵庫は入りませんと言う。壁の方にちょっとした出っ張りがあって、冷蔵庫の横幅が少し増した分入らないのだ。梱包を解いていないのでこのまま帰りますと言う。私の不注意だったのに、配送無料だったのは、助かった。

その日の午後、偶然、長男はイエローストーンに旅行したといって、鹿の飾り物持参。次男はクラス会の帰り、と言って、現れたので、揃ってヤマダにゆく。冷蔵庫の前をぐるりと歩いて 小さめのものを見て歩く。三人でこれが良いといった品が一致した。片開きだが、色が上戸棚やレンジと同じ色の白だし、メーカーも良くデザインもさっぱりしている。容量は今使っている物と殆んど同じだった。配達は二週間後になった。

十月十五日にやっと品が到着した。夏は遠く過ぎて、冬を迎えようとしている。過ぎてみればこの品が一番この家には似合っていたと思いながら、白い冷蔵庫を使っている毎日である。


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