思い出す言葉



 戦前、妹が、女子大の付属小にいた頃、学校給食が流行り始め、この小学校でも、給食がおこなわれるようになった。調理は生徒の母親が当番制で割り振られ、着物姿の母も時々調理に行っていた。ある日学校から帰ってきた母は「今日はみんなで叱られてしまった」と話し始めた。

その日の給食の副菜はロールキャベツだった。大きなキャベツをはがして芯の厚いところを削って捨てる。皆、当たり前のようにその段取りをしていた。
突然、一人の主婦が大声を挙げる。「皆様方はその芯を捨てるのですか、もったいない」と、その捨ててある芯を集めて回り、こうするのですよと細かく刻んで具の中にいれた。

声を挙げたのは、キューピーマヨネーズの社長の奥さんだった。芯のところを具に入れるのはそんなに珍しいことでは無いかもしれないが、少々気取った風の母親達の中にいて、たしなめるように声を挙げたのは偉い。



母の時代にいたキューピーの奥さんがあんなに確りした人だったのだから、後継者も其れを受け継いで、今も間違いの無い商品を作っているだろうと勝手に想像している。スーパーでそのマヨネーズの棚の前にたつと、昔の知り合いのような親しみと共に、わがまま娘のような振る舞いだった若いころの母の姿がふと浮かんでくる。

課題  残る

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