夏の一日


八月の末、例年のように目白の椿山荘で「大正琴まつり」があった。私も四年前まで、高峰会の一員で参加していた。入場券をいただき、友人のNさん、Bさんと誘い合わせ、昼過ぎ、三人で五階の演奏会場に行った。

司会者の紹介する言葉に続いて、お揃いの衣装を身に着けた人たちが舞台に現れ、ライトを浴びて次々と交替して演奏する。そのグループの人数、スパンコールやひだの付いた服のデザイン、色、弾き方、曲の選び方、雰囲気にそれぞれの組の特徴が出る。蝶ネクタイをした男性もところどころに々混じる。



今年の高峰会の演奏は「ラストワルツ、ビューティフルサンデー、白鳥の湖」の曲。少し揃わないところもあったが、この教室の音楽は音が柔らかく、品がいい。出場している人達は殆ど顔を知っており、休憩時間に先生や親しかった友人達と、一年ぶりに会った。

最後の先生方の演奏が終わり、Bさんは用事で帰ったが、私とYさんは椿山荘の庭園を散策する。夏にしたら凌ぎやすく、時々ベンチで休憩しながら坂を登って、庭園の中心にある三重塔までゆき、庭を一周した。降りて池に流れ込む滝を眺める。

午前中に家を出て、昼食を抜いているので、入り口の喫茶店で、軽食が欲しい、というと、二十分待って下されば、カツサンドが出来ますというのでそれを注文。庭の見える席に場所をとり、ゆっくりと出来上がるのを待つ。カツは焼いたパンに挟まれて、味良く出来ていた。薦められるままに美味しいコーヒーを二度もお代わりする。椿山荘を出たのが六時を過ぎていた。

なんとなく一日が決ったように経ち、夜になるのが当たり前のような日々なのに、この日は一日がとても長く、若いの頃の暮らしは毎日こんなのだったのかしらと考えていた。

 
H21/09

 

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