土産

 孫のR子二十三歳、が七ヶ月ぶりに東南アジア一の一人旅から帰ってきた。始め、二ヵ月くらいかと思っていたが、こんなに長くなるとは考えていなかった。親がいて、いつも日本からメールや電話をしているし、治安のいい所と聞いているので、私が心配して口をだすところではないが、若い女の子のこと、時々気なってメールを送っていた。

こまごまと、びっしり書かれた楽しげな様子のメールや葉書が数回来ている。中国からタイにいるかと思うと、ラオスへ、タイに戻り、英語学校一ヶ月、ベトナムに行ってからマレーシアの英語学校二ヶ月と、一人であちこち歩いて下宿先を決めて留まる。どこの学校でも日本人は自分一人で、あとはいろいろな国の人が混じっていたそうだ。



この旅行が良いか悪いかよく分からないが、普通のコースをたどらない子である。五、六年前、親からカナダとかオーストラリアへ留学する話が出ていた時には拒否していたが、今度は、自発的にこんな旅行をしたことや、そこで作った友人たちもいて、それが自信になって、何か後の人生の役に立って欲しいと考えている。物価が日本より格段に安いので、ほとんど今まで自分が日本で働いて貯めていたお金でまかない、質素に暮らしていたようだ。昔なら、とても考えられない。

R子は、現地の娘とよく間違われたそうだが、すっかり浅黒くなって帰ってきた。握り玉と水牛の箸とコーヒーが土産である。玉は片手に乗せ、落とさないように玉二つの前後の位置をかえる。動かす度に、金属の弾むような音が鳴る。しばし東南アジアの道端に休んでいるおばあさんの気持ちになって音を聞く。

H20/08

 

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