マザー牧場へ 

              
 九月の半ば、ひまわり倶楽部の日帰りバス旅行、「マザー牧場でサルビア鑑賞と金谷で海鮮ランチ」に友人と二人で参加した。ここの旅行はゆっくりしていて欲張らないので私に向いている。

房総半島にこの牧場が出来た頃から、マザー牧場の名は知っており、時たまテレビで菜の花畑などの景色を見ることがあったが、以前知人から動物はいるがただ広いばかり、と聞いていたのでこれまで特に行こうとは考えていなかった。

 当日はやや曇った天気だった。本厚木駅八時集合。江田駅に寄ってから横浜で二十三人揃い、九時半横浜を出て久里浜に向う。付き添いの付いた車椅子の方も四人あった。席が広くゆったりと出来ているバスである。

 久里浜に着き、十一時東京湾フェリーに乗り、対岸の千葉金谷港へ。海上で大きな球型の容器を幾つも載せた油送船とすれ違う。今まで見た事の無い姿の船だ。オーストラリアへ行く船とアナウンスがされた。 港に着いてすぐ昼食のお寿司となる。海の傍なので、さすがにお魚は新しく美味しい。

一人で参加の人も多いが、旅行会の食事会で顔見知りだったり、初めて会う人には言葉を掛けたりして、数人で一緒に行動する。



 マザー牧場に着いて先ずアグロドームの建物の中に入って、羊のショーをみる。二十匹くらいの羊が舞台の上で半円状に上下二列に並ぶ。羊の前にはこの羊の出身した国の名札が立てられ、姿の違うそれぞれの羊が紹介される。どの羊も殆ど動かずじっとして綺麗に整列の形を保っているのには感心する。
一匹の羊が呼ばれ、嫌がりもせず、毛刈りの台の上でおとなしく毛を刈ってもらい、忽ち丸裸になった。

 牧用犬が数匹出てきて舞台から客席の後ろの道を何回もすばやく駆け抜ける。何回か駆け回った後、最後に舞台上の羊の上にあたかも将軍のように乗った。どの犬もそれぞれ羊の上にのる。中央の羊に乗ったのは尾を上げている。そのあと幼稚園から小学生の子、十人ばかりが舞台に上がって係りの人の世話で羊をなでたり餌をやっていたりしていた。

 このショーが終わってから、外に出て少し坂道を下がる。見渡す限り一面サルビヤの真っ赤な花の道を歩く。其の鮮やかな赤色の広がりに思わず歓声をあげる。牧場の敷地が広いのでこんな贅沢に花が見られるのだろう。帰り道、羊が群れて歩いているのに出会った。

続いて緑豊かな草の広場で「アヒルの大行進」を見る。三十羽あまりいたのだろうか。広い原の奥の方にいたアヒルたちが合図ととも競争をするようにこちらの見物人の方に走ってくる。半分羽を広げ、其の必死になって走る姿がなんとも言えず可愛らしい。

白いあひるの中に茶色の鴨も一羽混じっている。係りの方からこのアヒルたちについて説明があった。次に指導員の合図で、アヒルの集団をあちらからこちらに二十メートルくらいの距離を競争して走らせ、どの鳥が一番早く着くかをみる。又、逆に走らせてどの鳥がビリになるかを後ろから見る。指導員には前もってその結果が予想出来るのだろう。アヒルにかける励ましの語りがほのぼのとしている。

最後に粒状の餌が見物の人たちに配られた。餌を持つ手の動きを見てアヒルがすぐ周りに群がってくる。ズボンに触れてくるのもあって、期待されるままに餌を投げ与える。孫達の付き添いでなく、自分の為に動物に餌をやって楽しんだのは初めてかもしれない。

これが終了し、売店でアイスクリームや牛乳饅頭を買ってベンチで暫く休む。

広い牧場内を回って走る十人乗り程度の小さい遊覧トラクターに乗りたいが、帰りのバスの集合時間に間に合わないとあきらめていたら、旅馴れた人の交渉で半周の往復をしてくれることになった。一緒に歩いていた八十八歳から六十歳半ばのもの、五人が一緒に乗った。羊や馬の牧場の前を通り、次はコスモス畑と、次々変わってゆく景色の中をトラクターのギザギザの車輪がはしる。手入れされたアジサイもたくさんあり、その季節になったらアジサイもきれいだろうと想像した。

時間が来てバスに戻り、マザー牧場を出発。やがて、東京湾の海ほたるの建物へ着く。四囲の海の風に吹かれて過ごしたあと、建物の中の売店をあちらこちらと歩く。春のばら園旅行の時と同じように、名物のパン屋さんに寄って、メロンパンをはじめ幾つかのパンを買った。

海ほたるを出て海中の道路に入り、横浜へと向かう。旅も終わりに近く、いつものようにバスの中で今日の旅行の印象を書くよう紙が渡された。添乗人や食事の良否のランクに丸印をつけてゆく。最後に今日の旅の総合点が問われる。これまでの旅は六十点から八十点だった。

隣席の友人と今日の旅行を振り返ったが、どうしても欠点が思い浮かばない。二人揃って百点と書いた。


H19/11

 

inserted by FC2 system