食事会



 横浜の中華料理店で、旅行会の食事会があった。家から遠いので億劫だと思ったが、迷っているなら行った方がいいと、横浜の友人一歳年下のAさんを誘って申し込んだ。

 十五年前、横浜に勤めで通った頃に比べ、新しい路線が出来て、電車の駅や街の姿、港付近の様子がすっかり変ってしまっている。たまに用事があって行く時には、自信がなく、人に尋ねながら行くが、この有名中華店は昔のままなので、駅の集合に加わらず直接会場に行った。

会は主催者側を入れて二十二、三人だった。食事会はいつも一応名の通ったお店のランチが用意されている。この食事会に出るのは四回目だが、席は其の時によって自由席の場合や、名前の書かれた処に座るよう指定される日がある。今回は席が指定されていて、四人席のテーブルにAさんと私、向かい側に初めて会う七十歳くらいの一人参加の女性、二人が座った。

同じ会にいるという気楽さがあって、初めから四人の話がはずんだ。あのツアーが良かった、あそこの食事が美味しかったなどあれこれ話をしているうちに、ふと気がつくと、Sさんと名乗った方の眼鏡から伝わって両方の鼻の中に透明の管が入っている。そして見ると後ろに酸素ボンベの入ったカートが置いてある。

暫くお話をしていても、それまで気がつかなかった。目立たずよくできている。聞いてみると一級障害者だそうだ。これまで酸素をお供に歩いている方を時々見かけているが実際にお付き合いすることは無かった。見知らぬ他人ばかりの会に出席してこんなに明るく振舞えるなんて素敵だと思った。

帰りがけにAさんと其のおしゃれ眼鏡のような大きな眼鏡の装置がよく出来ていた事、そして自分だったら、家に閉じこもりそうなのに、こんな時の生き方のお手本になったと話し合う。
食事は期待外れで気に入らなかったが、一つ勉強した日だった。

H19/11

 

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