松茸と新東名



十月のはじめ、また、Yさんから電話がかかる。「人生も最後の方なので、日本産の松茸を食べたくて高遠に行きますがいっしょにゆきませんか」と、お誘いがかかる。其の辺りは赤松が多く、松茸の産地だそうだ。私も日本産の松茸は、二十年前、関西旅行中、思い切って京都駅で買ったのが最後である。松茸もいいが、高遠と聞いてすぐに同行を頼む。有名な高遠の桜を四十年ほど前、桜の季節に団体旅行で足を止めているはずだが、ほとんどその土地の記憶がない。

当日、仲町台の老人ホームにYさん親子が迎えにきてくださった。それからは一切ドライバーの息子さんにお任せである。九時四十分ホームを出発。それから中央高速で、小淵沢を通り、信州蔦木宿着、お蕎麦の昼食を済ませ、三時、杖突峠の展望台で諏訪湖の一部を上から眺めてから、高遠のホテルに着く。部屋の前には川をせき止めて作ったという大きな池がある。池の周囲には桜の木がたくさん植えられ、正面のはるか遠くには、物見やぐらが見える。

夕食は(松茸尽くし、殿様コース)と言うのを頂いた。輸入物でないよう、念を押されたそうだが本当は素人では其の区別がつかない。

先ず土瓶蒸、信州サーモン松茸酢味噌 焼き松茸、天魚吹き寄せ味噌、松の実、,胡桃酢味噌,栗の渋皮煮、稲穂」。つぎの松茸蒸寿司の頃までは、まだ美味しくいただけたが、しゃぶしゃぶ用として大きな皿に松茸、肉,海鮮、野菜、の材料が盛られて出て来た時には、見ただけで、お鍋には殆ど手をつけられなかった。次ぎの野菜のてんぷら、手打ち蕎麦も、味見程度しか口にはいらない。



最後の松茸ご飯ときのこ汁、これは満腹のはずなのに意外と美味しくたくさん食べられたのは不思議だ。普段の食事と同じ様だったからか。本来は若い元気な人がお酒を交しながら相当時間を掛けていただくコースなのだろう。もったいない食事だが、老人ホームから、高遠まで来て、いつもと違う気分でお膳の前にいる自分の健康が嬉しい。

翌日は宿を十時にでる。道の駅、南アルプス村長谷、で休憩、中央高速で伊那IC,諏訪湖サ-ビスエリア着、軽く昼食。
二時、道の駅、富士川ふるさと工芸館に着き、そこで、すずり、和紙などを見る。道の駅、冨沢で小憩,三時半、新東名新清水ICに入り、四時前ネオパーサ駿河湾沼津の休憩所に着いた。高台の展望台からは、はるばると旅をしてきたであろう海水が駿河湾の中を出入りする様が良く見える。此処が今回のドライブで一番印象に残った場所である。この休憩所の建物は広く、みやげ物や食べ物やの店が多い。此処で夕食をいただく。十七時出発、横浜青葉ICを出てスタンドで給油。十八時四十分仲町台のホームまで送って頂く。

Yさんは私より二歳下で、私とは三十年前、新宿のお習字のお稽古で、一緒に通ったのがご縁だが、私が老人ホームに入ってからまで、親切に声をかけていただけるとは本当に有り難い。九十歳も近い手のかかる老人二人を連れての一泊旅行なんて、どんなにか大変だろうと私の息子達はYさんの息子さん「五十代」に大感謝である。




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