この夏の旅行

 旅行会社から「同世代の仲間と集う、八十歳以上限定、京の夏の風物詩・納涼川床料理と五つ星ホテルの有馬グランドホテル、二泊三日の旅。八万八千八百円」の案内が送られてきた。出発日が七月二十八日、三十日限定とある。一番暑い時期であるし、値段が気に入らないので無視しようとしたが、先日、一つ年下の友人Yさんと旅行の話が出ていたので、一応こんなのが来たとYさんにファックスで送った。

 翌日、Yさんから 電話がきた。「息子が、あちらこちらと行かない年寄り向きのツアーだからとても良い、と言って、旅行社に問い合わせると、すでに七月の二回は殺到して満杯。急遽八月三日からの旅行を追加したというのでその場で二人分申し込んだ」という知らせだった。さすが男性は決断が早い。私は迷うことなく行くことになった。

 当日は東京駅集合。広い東京駅の構内をYさんと地図を見たり、人に聞いたりして集合場所に行く。同じツアーの人二十三名。男性八名、うち夫婦七組。添乗員の女性に導かれるまま、十一時十分発の新型新幹線に乗り、一時半京都駅に着く。

先ずバスガイドさんに迎えられて金閣寺へ。私が再建された金閣寺へくるのは三度目だが、複数回の人が多かったようだ。八年前、同じYさんと一緒に来たとき、池の中心に輝いている金閣寺をみながら、庭園の周囲を一周したが、この日は暑いので、半まわりして早々に日陰で休む。

青葉の中に立つ鐘楼に、外人観光客をはじめ若者や母子が登っては降りてくる。生き生きとした若い人たちのかけ声や動作はこちらまで元気を貰う。

金閣寺をあとにして、バスガイドさんから京都の通りや建築物の説明を受けながら京都を出て、琵琶湖湖畔に聳え立つ高層階建築の大津プリンスホテルへと向かった。



琵琶湖が遥か遠くまで見渡せるホテルの二十一階の窓からながめると、紅白で彩った観光船をはじめ、小船が湖面をゆっくり動いているのが見える。
夕食は中華コースを選らんだが、献立が良く、どの料理も美味しく全部頂いた。

 翌日は湖南三山の長寿寺へ行き拝観し、法話を聞く。昼食に予定した貴船の川床料理の店に行ったが、少し前に小雨が降り食事場所が濡れたそうで、店内に用意された普通の部屋での食事となった。食事どきには止んでいたので、せめて川に架かる食事場所だけでも案内して見せてもらえば良かったと後で思う。

 その夜は有馬グランドホテルに泊まる。さすが、今まで私の泊まった事の無い豪華な二人部屋だった。すべてゆったりとした日本間に洋間、ベッドルームと洗面所にそれぞれトイレがある。大浴場にゆくと、走り回っている小さい子供が多いのに驚いた。聞くと夏休みなので親子孫の家族連れで、近隣から来ている人が多いそうだ。夕食はお祝い懐石料理。この旅行では行く先々で赤いお祝い箸を出され、自分の年令を自覚させられる。次々に運ばれてくるお料理はご馳走だがとても食べ切れなかった。

三日目、有馬温泉を出て、京都に戻る。バスの中では絶え間なく前日と同じようにマイクで場所などの説明があった。この辺りの地図を書いた簡単なチラシを配れば一目瞭然に現在地や建物が判るのにと思う。静かに窓から景色をみている時間も欲しい。

南禅寺傍の有名豆腐料理の店にゆく。ここでもお豆腐料理は多くて余すことになり、一緒に出された野菜のてんぷらがかえって美味しい。

南禅寺の石段をあがってこの旅行グループの記念写真を撮った。私は一番遅れて並び添乗員さんの前に立った。撮影を終わってから境内を散歩した。南禅寺も何回も来ている人達がいて、先にたって案内してくれる。この頃には参加者同士がぐっとなじみ、弟だ、姉だと言いながら雑談を交わす時間が多くなった。
京都の有名漬物店に寄り、試食、買物。三時過ぎに京都駅を出発して東京に向かい、新横浜で途中下車して帰宅する。

旅行の一日目の夜半、私は洗面所で転んだ。その時の状況は後でよく思い出せない。安定剤のデパスを多く飲み過ぎたのかもしれない。友人は転んだ音に気がついて起きてきてくれた。帰宅した後も頭、首、肩の痛みが残ったので一日おいて病院に行き画像を撮ってもらい、大丈夫と言われ安心した。 

 それでも、まだ気楽に一緒に行ける友人がいて、私の体力もあって、三日間普段と違う夏の日が過ごせたのだから、出かけて良かったと思う。

今まで旅行の集合写真は買っても、ろくろくその写真を見直すことがなかったが、今回は同世代ということで何となく同級生のような親しみがあり、南禅寺の集合写真をいまだテーブルの上に置き、時々見返している。
 
H20/09

 

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