胡蝶蘭



  一ヶ月ぶりにかからつけの開業医にゆく。ドアーを開けると入り口の台の上に何時もは簡単な生け花があるのに、この日は大きな胡蝶蘭の鉢がおいてあった。よく見ると「祝、開業二十年」の文字の札がある。私はこの医院の開業直後からこのクリニックに通っている。



このクリニックは駅に近いのは便利だが、建物のビルが古いので、エレベーターがない。外階段で、二階の診療所に上る。前は何も感じなかったが、今は手にしている歩行用のキャリィバックが重く、これを持って階段を上るのは難儀になった。それで、今はまず下の階にある薬局に寄り、バッグを預けて、手摺をたよりに一歩一歩外階段を上がっている。

診察を終えて階段をおりて、一階の薬局に戻る。待合室には、以前から小さい魚のたくさん入った水槽が置いてある。「小さいお魚が驚くのでガラスを叩かないで」注意書きがある。赤や青の小魚の気忙しい動きを何となく目で追いながら、薬の出るの待つ。

考えるともう何年も同じところで、同じような暮らしを私は繰り返している。


 H23/07

 

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