孫の結婚式

去年の秋、長男の三人娘のうち、長女が来年初めに結婚すると聞いてホッとした。今時は三十歳くらいまでその気にならない娘が多いと聞くが独身三人娘になったら困る。長女が二十九歳で自分と気の合う人を見つけたのは嬉しい。

 考えると、私は甥の結婚のとき以来、結婚式には十年間、縁が無かった。甥の時は人並みに着物をきて出席していたが今回は、杖をついて我ながら足元がおぼつかない様なので、洋服と決める。あと四人孫娘がいるので、生きて出席出来ることにして、姉のところの姪を相談役に連れ、デパートをいくつか回り、ラメ入りの上着とビロードのスカート、それに大きな造花を奮発した。

 当日は晴天、東京のホテルに着く。あちこちのホテルで、料理を食べ比べて此処に決めたそうだ。今風に、親には相談なく、また親に頼らず、自分達で一切の計画を立てたという。七十人ほどの出席者である。



 始めにホテル内の教会で式を行う。去年、大病をした長男が元気を取り戻し、花嫁の父親の役目で、二人でバージンロードを歩いてくる。孫娘は背が高く、シンプルな白のドレスを着ているがそれが清潔ですてきに見える。正面に新郎新婦が並んで立つ。神父さまの司会のもとにキリスト教の儀式は進み、誓いの詞も無事に済んだ。最後に讃美歌「慈しみふかき」の合唱。よく知っている歌なので大きく声を出した。

 別室で休んだ後、披露宴会場へ行く。和食洋食どちらでもよかったが、私は機会の少ない洋食を選ぶ。

プロの司会者によって夫側、新婦側の上司、友人たちの祝辞、その他の進行が進められた。適当に間を置き、無理がなく、自然な笑いを誘い、さすがプロとその実力に感心した。

 地方から来られたお婿さん側のご両親、ご親戚は誠実そうな方々だった。式を学校の休みに当てて選んだので、昨日はこの日出席した子供さん方を連れてディズニーランドに行かれたという。

 一旦退場した新婦がお色直しをして黒地に花柄の和服で出てきた時、自分の孫ながら驚くほど、綺麗な姿を見せていた。お引きずりに着物を着ていたが、上品に出来上がっている。身内同士で褒め合っていてはおかしいけれど、と言いながら、長男の嫁のお母様と眺める。昔はいなかった素人カメラマンがやたらに多い。

部屋を暗くして、各テーブルの代表が新夫婦の持つ蝋燭から貰ってきた火を、自分のテーブルの上にあるキャンドルに同時に火をつける。あちこち一斉にちいさな花火が十秒ほど光を放った。

着飾った娘たち十人あまりが中央に集って、花嫁の持っている花束の中から出ている紐をそれぞれ引いた。「花束と繋がっている当り籤の紐をひいた者は次に花嫁をなれる」という籤引きの趣向は、若々しい空気が流れ、賑やかな声が上がった。長男の次女がこの籤を引き当て、「がんばります」と周りの人達に宣言していた。

花束贈呈、お父様のご挨拶に続き最後の新郎の挨拶もよかった。引き出物の手提げを貰い、すっかり安心した気分になって帰りの車に乗る。夜、この日のことを思い返しながらお祝いのケーキの箱を開いた。
 
H19/03

 

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