鶏頭

朝、玄関前の農家の畠を借りているIさんから、葉や泥のついた生姜をいただく。昔、母がやっていたように、軸を付けたまま薄く切れ目をいれ、サッと湯を通し、甘酢に漬けてコップにさす。

この畠の道路との境には毎年秋になると垣根代わりに植えられている花が咲く。以前は、臙脂やピンクの小菊が咲いて勝手に切ってくださいと言われ、 便利にしていたのだが、何時の間にか滅びて無くなり、去年からマリーゴールドになった。所々に鶏頭が目立つ。沢山肥料をいれ、手入れされた土に育っている ので、私の家の庭の花々よりずっと元気がいい。


急速に土地が値上がりしていた昭和37年にここへ家を建てた。経済力が無く、都心からずっと離れたこんな林や畠ばかりの処で、何かと不便だと愚痴を言った ら、父が「先日、新宿が副都心になると新聞に書いてあった。少し待てばぐっと便利になるよ」と言い、そして「k君(私の夫)が偉くなったら、売って便利なところに引っ越せばいい」ともいうので、そんなものかと納得した。

当時は、宅地規制がいい加減で、家の前に出来るはずの道路が造られず、長い間畑の間の細い道を歩いていた。10年前、近くの大地主の呼びかけで、やっと公道を作る話が具体化した。

先々の為に、辺りの家はどの家も、道路分と記して1メートル幅分を余計に買っていたが、「人は通っていいが、車は駄目」と言う家があり、結局、周りの家が協力して隣の畠の土地を買って補い、4メートル幅の公道が出来た。

今足の弱った私は、タクシーが玄関前まで迎えに来る度に、はっきりした道が出来ていてよかったと改めて道を眺める。そして私は相変わらず此処に住む。

H18/10

 

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