箱根へ

 五月の中旬、友人、吉野さんと一泊二日で箱根に行った。吉野さんはリュウマチがあるので私と体力がつり合い、多くの場所には行かず、気楽に休みながら旅行が出来る。新百合丘駅から特急に乗り、小田原で乗り換えて強羅に着く。私の家から、小田急線で一直線に行けるので都合が良い。

 強羅のお蕎麦屋さんで昼食を済ませ、ホテルに荷物を預けてから、ケーブルカーとロープウエイを乗り継いで桃源台へと向う。今年は久しぶりに、芦ノ湖を南北に往復している海賊船に乗ることになった。

新しい紺色の海賊船がバリアフリーになっていると聞くので、スワンボートが並ぶ桃源台発着所に近いベンチで、其の船の到着を待つ。
前便の、賑やかに飾りたてた赤いの海賊船に、先生に引率された小学生が何十人もぞろぞろと乗り込む様子を眺めていると、こちらまで嬉しくなる。

 私達を乗せた紺色の海賊船は、湖の周りを囲む新緑の景色を変えて行きながら進んだ。すっきり晴れているので、湖も木々も生き生きと見える。元箱根の近く、左の山の裾に、当然のように箱根神社の赤い鳥居が見えてくると何となく、ほっとする。神社へと続く鬱蒼とした坂道を、家族で散策した何十年か前の姿が思い出される。



元箱根に着き、「山のホテル」往きのバスに乗った。ここのつつじの庭が好きで、最近は吉野さんと毎年のようにこのホテルへ来ている。今年も丁度見ごろで、たくさんの人達が出入りしていた。ホテルは高台に建っているので庭の木々の間から芦ノ湖や船がチラリと見える。杖を持つようになる前は、後ろの山の方まで登って、石楠花の花も見るようにしていた。

色彩豊かなつつじの庭を、道順に添って散策したあと、日陰のベンチに掛けて、暫く景色を眺めながら休む。それが済むと、この庭が見えるホテルのレストランに入ってゆっくりお茶とケーキを楽しむ。箱根に来るとこんな時間がいちばん嬉しい。

それにしても友人同士で来て歓声を挙げている元気な中年女性が多いこと。なんとなく、其の日も職場で働いているだろうご主人達の姿を重ねてしまう。これが平和で豊かな日本の姿なのだが・・・。

強羅のホテルに帰ってお風呂に入る。このホテルは初めて泊まる宿である。何種類もの柄の浴衣と、上下に別れて作務衣のようになった着物が用意されていた。若い人は軽く浴衣姿で歩いているが、私達は着物。其のまま夕食の膳につき、コース料理をいただく。美味しい。

 翌日は仙石原方面行きのバスに乗りポーラ美術館へ。ここは今まで縁がなかった。モダンな明るいな造りの建物には、私でも知っているような有名な画家の絵が数多く展示されていた。

次にこれも初めての「星の王子さまミュージアム」へ行く。サン=テグジュベリの時代の世界風景を散策しながら、「星の王子さま」のメッセージに思いをはせるようにと、南プロヴァンスの庭園風造りとなっている。展示物が多い大きい建物は、私達には不向きなので入らない。絶えず流れている大量のシャボン玉を眺めたり、小さい白い教会を見たり、ベンチに腰掛けて木々の間からの風を受けたりしながら、庭を一巡し、レストランに入って時間を過ごす。

ここの出口近くのお買い物店で、子供向き狐のぬいぐるみの一つと目が合ってしまい、大した値ではないので、買ってしまう。夕方、ロマンスカーに乗り帰宅する。
狐は今、玄関の飾り台におさまっている。

H19/06

 

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