冬の河口湖



二月の初め、二歳年下のYさんから電話がかかった。二月二十二日(日)夜の、河口湖の冬の花火を見に行かないかとの誘いである。あまり上等ではないが、宿は押さえてある、冬は空気が澄んで花火が綺麗に見えるそうだから二人で行きましょうと、いう。動作の遅い私が気兼ねしなくてもいい相手なので喜んで行くことにした。

当日、Yさんの息子さんが車で狛江から生田の私の家まで迎えにきて下さり、一路新宿へ。休日で車が少なく、すいすいと新宿の高速バス乗り場待合室に着いた。息子さんが手早く予約切符の時間変更の手続きをしてくれ、十時過ぎ、目の前に止まっている高速バスに乗車した。河口湖まで凡そ一時間四十五分かかる。

お天気は晴れていて、左手に大きな富士山を見ながら高速バスは走り、河口湖駅に着いた。昼時なので駅前にあるほうとう屋に入ると満席に近い。野菜、南瓜の沢山入った、極太うどんは久しぶりで美味しく全部いただいた。



乗り降り自由のバス券を買い、先ず山梨宝石博物館へ。河口湖には何回か来ているが此処は初めてである。

ケースに飾られた名も知らない宝石の数々、大きな水晶の原石、などを感心して見学してから、隣の広々とした売店の部屋へ。客は私たち二人だけである。着ていたセーターに合いそうなネックレスを見つけたので、首にかけてみると、雑色の石の玉がセーターにぴったり合う。店員に褒められるまま、値も何千円と手ごろなので記念に買ってすぐ身につけた。Yさんも店員推奨のものを買う。老女二人連れの旅ははこんな場所でゆっくりと冗談を言いながら時間を過ごせるのがいい。

次に、河口湖オルゴールの森へゆく。池を中心に幾つかのメルヘン調の建物が周りを囲んでいる。六十代、女学校の一晩泊まりクラス会で此処に来て、池にかかる橋の上に十二人ずらりと並んでいる元気一杯の写真が家にあるのを思い出した。オルゴールの演奏を聴き、外に出てテラスでフルーツ紅茶やココアを注文して一息つく。池の傍に行って、からくり時計の制服をまとった士官の指揮にあわせて踊る池の噴水をみる。

雪を被った大きな富士山が目の前に迫まっている湖畔のホテルに着く。お天気も良く、白い姿の富士山は何時見ても優美で安心を貰う。すぐお風呂にはいり、六時夕食。鍋が和洋と二つも付いて、次々と品数が出てくるが、とても食べきれなかった。

八時から目的の花火。富士山の右側に花火が次々と上がる。少し寒いけれどベランダの椅子に腰掛けて眺める。夜空に高く大きく色とりどりの花火がはじけた。途中から湖面にも花火が半円形に広がり思わず歓声をあげる。後方からも花火が上がり、どれも綺麗でみとれた。カメラで写したが、技術不足で家に帰ってから見ると二人とも殆ど写っていなかった。

翌日は小雨が降っていた。バスに乗り、猿回し劇場のそばにある猫グッズの店にはいる。クッキーと小さい紅茶缶をセットにして三組買ってから、附属の喫茶店で美味しいコーヒーを飲んでゆっくりする。隣に大きな和菓子やさんがあったので留守を頼んできたお隣さんへと目新しいお菓子を買い、もう充分遊んだ気になってバスで河口湖駅へ戻った。予約してある高速バスを又、早い時間に変更して二時半ごろ河口湖を発った。

新宿に着いて、また休憩をしょうと、京王デパートに入ると、丁度、冬物最終バーゲンの最中だった。すぐその気になって、バーゲン品を見る。大分疲れているはずなのにこんなところでは元気がでるから不思議だ。それぞれ何かを買って帰宅する。
 
H21/03

 

inserted by FC2 system