新しいお皿


春先になくなった女学校の友人Iさんのご主人から二十センチ足らずの、紺色のお皿が送られてきた。今習いに行かれている陶芸教室での作品だという。四季の花模様の中に変体仮名で私の名前が隠れるように書かれている。



女学校の五年間、何時も席が後ろの方だったのでIさんをはじめ数人がグループになって遊んでいた。このIさんの夫婦は戦争中、その頃には珍しい恋愛結婚だった。陸軍士官学校を出たご主人は戦後、ご両親のいる東北地方の田舎に帰り自動車工場に勤め、彼女もすぐその土地の中学の教師となって働きはじめる。あとでご主人は車関係の会社を創られた。

ときたま、クラス会に彼女が上京するので会っていた。「私の住んでいるところ田舎だから、先生は、先生様と言われて、とても偉くて、なんでも相談されてしまうの」といっていた。体格がよく、親しみやすい人柄だったので人気があったのだろう。

何年か前、近くに「常磐ハワイアンセンター」が出来たので案内するから、遊びにいらっしゃいと、本気になって言われた時があった。しかし私も何かと忙しい時で行かなかった。後になって、センターの成り立ちを映画にした「フラガール」(時代の波によって閉ざされて、追い込まれた炭鉱の村で、少女たちが舞台でフラダンスを踊る)をテレビデ見た時、双方が元気な時、思い切って訪ねればよかったと後悔した。

お目にかかったことのないご主人だが、頂くお手紙の端々に彼女に対する想いが深く伝わってくる。大きさも手ごろなこの皿はどっしりとした安定感があり、果物にもお魚にも愛用している。この日は美味い油揚げが手に入ったので焼いてのせた。

H21/11

 

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