ある日曜日

何か音がしたようで目がさめた。遠くでがたがた戸を開けるような音。何だろう。時計を見ると、十二時を指している。明るいので昼間の十二時だと分った。昼まで自分が寝ていたのかと驚き、大急ぎでパジャマを脱ぎ、枕元に置いてある洋服に着替えた。

隣の日本間は雨戸があり、豆電気がついていて薄暗いが、次の居間を開けるとぱっと明るく、いつ来たのか長椅子の中央に長男がでんと腰掛けているので驚いた。そして庭にはお隣の奥さんがいて、長男と話をしている。どうしてもその状況が理解出来ない。

話を聞くと、長男は昼に訪ねてきたが、チャイムの反応が無いので、玄関の鍵をあけて中に入る。雨戸が閉まっていて私がいないので日帰り旅行でも行って留守なのだろうと思い込んだ。一応私の寝室もサッと見たというが、寝ている私を見逃している。



前の家の北側台所からは私の家の南側全体が良く見える。私は家を空ける時は必ずお隣さんに、声をかけている。その日奥さんは、なかなか私の家の雨戸が開かないので心配していた。入り方は知っているので何回もご夫婦で見に行こうかと、迷っていた。十二時、突然、がたがたと雨戸があき、長男が内から顔を出したので、様子を確かめに私の家の庭にきたところと言う。私が行方不明でお隣に同じような心配をかけたことはこれで二度目だ。

前日に出かけて、特別疲れたということもない。前夜睡眠薬を一錠飲んだが、これはいつものことだ。二、三日後にうっすら風邪の微熱が出たので、その前駆症状だったのかもしれない。

翌日、改めてお隣さんに家に来てもらい、私の家の中を、見ていただく。夫が病気のとき、寝室にある一間の押入れを改め、外見は、唐紙の押入れ風のトイレ、を作ったので、私が行方不明でも他人は戸を開けない場所がある。それと枕元にある電話の子機の場所を教えて、怪しい時には電話を懸けるよう頼む。

一人住まいの年寄りは、自分は気楽にしていても、お隣さんは事故がないかと責任を感じていて、ご迷惑をかけているのだ。

H21/10

 

inserted by FC2 system