ある夏の日



八月十八日「日」昼過ぎ、次男が横浜から車でホームにやってきた。早速私が同乗して、近くの長男の家に向かった。マンションの入り口前で待っている長男を乗せて、老人ホームに入る前まで、私の住んでいた川崎市の生田に行く。

久しぶりなのでちょっとしたお土産をもって、家の周り、数軒に顔を出した。皆、機嫌よく座敷にあがれ、といってくれるが、息子二人を連れているし、そんな暇はない。家の前の畑で野菜を作り、時に、大根や人参を玄関前に置いてくれた私より二歳下の主婦の家に行くと、一年会わないうちに二回転んだそうで、這って奥から出てきた。農薬のあまりかけていないここの大根の葉でつくる、ごま油いためは私の大好物だった。



次ぎに近くの公園墓地、春秋園にいって、墓参りをする。炎天下、駐車場で車から出ると、そのあまりの暑さに、車の中に残ろうかと迷ったが、ここから長時間歩くわけでも無い、と、と思い直し、車を降りた。駐車場からは、途中二間ほど、横に金網を張った坂道があり、補助車に頼る私にとって難所だが、金網に捕まって慎重に足をすすめる。

春秋園は、昭和三十七年のこの生田の土地に越してきた時には、できており、近所の家は、既にここの墓地を買っている家が多かった。住んで三十年くらい経ってから、そのころ売り出した四平米の平均的な広さの墓地の権利を買った。決して広い方では無かったのに、最近、出来ている新しい墓を見ると、多くは、仕切りもなくぎっしりと、いろいろな形や色の小さい墓が並んでいる。
何年か前、ここの植木屋さんから、権利が安い頃作った広く立派な墓を、先代から引き継いだ人が、年間の費用がかさんで困ると愚痴を言っているとの話を聞いた。狭い墓も現代風で、草取りもいらず、いいのかも知れない。生田に住んでいた時は、毎年墓の両脇に区切りをいれて、チューリップや百日草などを植え、いつもお墓が綺麗ですね、とすれ違う人にほめられていた。

墓参を終え、取りあえず水分補給に「ジョナサン」に入り、飲み物をとって一休みする。早めの夕飯は何がいいかと聞かれ、迷わず「回転寿司」と答えた。寿司は老人ホームの献立には全く出てこない。長男、お勧めの回転寿司屋にはいり、好みの生ものを気ままに頼んだ。老人食からはなれ、その味が新鮮で美味しい。三人で何皿もいただいたのに会計が安いの驚いた。ホームまで送ってもらい一日が終った。




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