不忍池


11月末、学校時代の友人と上野に行った。上野は子供の頃から学校の先生に連れられて展覧会等に来ているので、親しみのある処である。上野駅公園口を出て人々の後について都美術館の方へ歩く。この頃、いつもは全部黄色になっている銀杏の葉が今年は未だ3分くらい青い。

西洋美術館の前を通り過ぎて歩いていると、前の人達が止まって十字路は人だかりとなっている。大道芸でもしているのかと思ったが様子がおかしい。近くの人に聞くと、これから天皇陛下がお通りになるという。よく見ると警察官が幾人かいる。私も大勢の中に入って並んだ。

程なく先導の白バイや車が通り、続いて天皇陛下がにこやかに手を振っておられる車が前を通り過ぎていった。思いがけずこんな場面に居合わせて運がよかった。でもこうやって、周りに何時も気を遣われての外出は、自由が無くてお気の毒のようにも思う。

いつも変わらない広場の鳩の群れや、噴水、遠くの博物館を見ながら歩く。

都の美術館に着き、きり絵展に入る。3年前行ってから、毎年家に案内が来るようになった。普通の絵と違って輪郭がはっきりしている。変わった紙の材料や使い方など、それぞれの工夫された作品をゆっくり観ながら会場を回る。何ヶ月もかかったような繊細なきり絵にも感心するが、単純な作品にも人柄が出て面白い。

お昼を過ぎたので美術館の上の食堂に入り、久々に此処のハヤシライスを注文した。

美術館を出て、不忍池に行こうとしたが、道順があやふやである。迷っていると、車台にダンボール入りの荷物を数個載せ、上から青いビニールシートで覆った荷車を押す3,40人の集団が移動しているのに出会った。この山に住人らしい。先ほどの天皇陛下のお車に関係があるのだろうか。



この人達に道を聞き、精養軒の横を通って不忍池に着いた。蓮はすっかり枯れている。小さな鳥達が弁天堂の傍の池にいて可愛らしい。友人がパンの端を持っているのに「餌をやらないで」と立て札が出ていて残念がった。

弁天堂にお参りしてから池の周りをし少し歩き、上野駅不忍口に着く。この日はこれだけ歩いても家に帰ってまだ余力を残していた。
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