散歩道




この老人ホームは仲町台の駅の少し手前まで、すぐそばにある木陰の小道で繋がっている。普通の人は駅まで歩いて十分くらいだろが、のろのろと歩く私には十五分以上かかる。時たま自転車は通るが、ジョギングする大人、学校帰りの子供たち、ヨチヨチ歩きの子供、乳母車。それに私たちのような老人が、車を全く心配することなく通れる道である。

さわやかな風を感ずる晩秋の日、ホームの友人と二人でこの道へ散歩に出かけた。沢山の落ち葉の中に在るる木々は、緑や黄色の葉に赤の色も混じり、その下を通ると日ざしが心地よい。雑談をかわしながら道を駅の方へと歩く。さまざまな人達とすれ違いながら、まだ外に出られる健康があって良かったと思う。ホームでは、外出の許可がおりない人の方がずっと多い。



一本道の途中、自然の水のあふれている場所がある。時には犬が水を飲んでいるのに出会う。そこを通り抜けて駅方面へと向かうと、別れ道が四本あり。曲がれば、そこに続く街の景色が違ってくる。どこで曲がるかは其のときの目的次第。散歩といってもちょっとした用事があった方が張り合いがあるので、今日は四本目を曲がり、駅前の東急ストアまで行って100円ショップを見ましょうと話し合った。

腰掛けられる様な大きな石があるので小憩、又歩いてゆくと、四本目の曲がり道にきた。この角には、駐車場完備のレストランがある。予約制だが、以前姪とランチを食べたら、パスタが美味しかった。急に気が変わり、丁度三時になるので、休憩しようということになった。混んでいたが、受付で聞くと空席があった。久々に、ホームでは味わえないケーキセットを注文する。音楽学校がそばにあるので、周囲の席は殆どが華やかな若い娘さんばかりで、その中に混じって、冴えない老人の二人組はちょっと気が引ける。一階は前面がガラス張りなので、林の中の木陰道を往復している人達の姿がよく見える。重そうな荷物を持ち、足早にすれ違ってゆく其の人達を眺めていると、今の私たちの暮らしとは違う、以前の忙しかった自分の日常生活が思い出される。

久しぶりに、美味しいケーキとコーヒーをいただく。周りの雰囲気を楽しみながら、とりとめない雑談をしているうち大分時間が経ってしまい、今日の散歩はそこで終りになり、目的だった東急の100円ショップは次ぎの機会となった。久しぶりに味わったコーヒーの余韻に、何となく豊かさを感じながら、今度は木陰の道をホームヘと向かった。



H25/12
 




 
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