庭の手入れ

 ずっと秋だけだった植木屋さんが、このところ、春にも来て貰う様になった。消毒が主だが、私に庭の世話が殆ど出来なくなったからだ。
 
 此処に引っ越してきて四十数年前、真っ先に植えられた金柑の木は、居間の傍、南側の一番いい場所を占めているのでよく伸びる。春になると、私が脚立に乗って、時々鋭いとげに刺されながらも短く刈っていた。

初めのうち、金柑の実は十二月末にはオレンジ色になるので、お正月には甘く煮ておせちの重箱に入れていたが、ちかごろは季候のせいか十二月はまだ青く、眺めるだけになっている。春になると大きいのを選んで三瓶ほど煮る。あとの実は鳥達が入れ替わり来て啄ばみ、何時の間にか、無くなる。

夏近くなると、金柑の木に芳香の強い白い花がたくさん咲いて、今まで何処にいたのかと思うほどの蜂や、綺麗に装った蝶がひらひらとやって来る。忙しげにあちこちと移動して働いている小さな生き物たちを、居間からガラス越しにそっと眺めていると、家の中にいる私まで元気を貰うような気がする。



一坪にもならない小さい花壇があるが、昔と同じように、花を絶やさず植えている。春、土を掘り返して肥料をいれるまでを植木屋さんに頼み、暫くして、次に来るシルバーの草取りのおじさんに花の苗を植えて貰う。このおじさんは、奥さんなくし、ニートの息子さんと二人暮し。しかし、いつも明るく冗談を言う楽しい人だ。

去年は一つも取れなかった梅の実が、今年は大分取れそうだ。

黄色のもっこう薔薇は、今年も溢れるように花をつけて咲いた。その葉は、夏の座敷の日よけになっている。

花が綺麗に咲いている時、私は道路の生垣から自分の家の庭を覗いてみる。昔と同じように、彩りのある庭を確認して、なんとなく安心する。

H19/05

 

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