生田薔薇園


横浜の友人Aさんが、テレビで映されていた生田バラ園を見たいと言うので、五月二十八日、バラ園に案内した。このバラ園は私の家からは二駅先にあり、私がここに出かけるのは三年ぶりである。十二時、向ヶ丘遊園の駅で待ち合わせ、先ず駅前で食事をする。

バラ園の近くまで市バスがあり、歩いて二十分くらいの道のりだが、小高い台地にあり、山のぼりをするような道になっているので、私たちは駅前からタクシーに乗った。三年前と違って、バラ園の隣にある広場まで、タクシーがそのまま登れるようになっていた。其の広場には老人ホームのマーク入りのバスが数台、止まっていて、車椅子の人達が、ヘルパーさんに抱えられるようにしてバスから出入りしている。何となく安心する風景だ。

久々の好天気なのでバラ園には沢山の人が出ていた。見わたすかぎりバラの花で埋まっている。植え方にいろいろと工夫がされ、色や花の形が豊富で、豪華な雰囲気だ。ことに赤い大輪のバラは眼を引く。白い彫像が花の間に幾つか置かれ、花を引き立てている。隅の方では花の苗を売っていた。



バラを十分に見て,そろそろ帰ろうかとしていると、「Mさんでしょ」と中年の女性に呼び掛けられた。向こうは嬉しそうに笑っているが、私には誰だかわからない。「前にヘルパーとしてお宅に伺っていたヘルパーのYです」と言われる。しかし幾ら顔をみても、ピンと来ない。「いつ頃ですか」、と聞くと五年位前といわれる。「私がヘルパーに出た、代わりに実母をよそのヘルパーさんに見ていただいていた。」という話でやっと少し思い出してきた。

二年間も通って下さったという。「今日休みをとって、バラ園にきたら、元気なMさんに出会えるなんて、とても嬉しい」と、喜んで下さっているのに、この方に、直ぐ話を返すことができないのは情けない。こんなに忘れっぽくなったのかと、がっかりした。

今、家に来ていただいているヘルパーさんでも、バラ園で出会ったら気が付かないのかもしれない。どうしてもおかしい。Yさんには、こんな所に友だちと二人で来られるなんて素晴らしいですよと、褒められた。

Aさんが珍しく生田まで来たので、バラ園からタクシー乗り、近くの「岡本太郎美術館」に案内する。覚悟をしていたが、タクシーを降りてからの道を十二三分歩かなければならない。いつかこの道でバスを見たと言う人がいたが、老人ホーム専用バスだったのだろうか。メタセコイヤの大木や新緑に輝く木々の下陰を私たちのペースで歩く。人里離れた昔のままの雰囲気がする処だ。

美術館には傷害者手帳で入る。絵は適当に見て、さまざまな創作椅子に腰掛けてみて楽しむ。最後に美術館の喫茶店にはいって休憩。注文した餡みつがたっぷりとしていて、思いがけず美味しかった。


H22/06

 


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