太る

           
二十一年前、病院に出たり入ったりしていた夫が亡くなったとき、事前に自分の喪服の用意が出来なかった。細身の妹が、しゃれた飾りのついた自分の喪服を着るよう、持ってきてくれた。まさかと思って着てみるとすっきりと入ったので、こんな痩せたのかと驚いた。

それから二十一年、すっかり太ってしまった。息子は「相撲取りのようだ。みっともないので少し痩せたらどうだ」という。食事は、栄養には気をつけて、量は控えているつもりだが、まだ足りないらしい。気に入った洋服が着られなくなった。



昔から運動は苦手だ。女学校の体操の時間に私の腹ばい行進の姿がおかしいと友人に笑われた場面は、今だ頭に残っている。このごろは坂道を転ばないようとタクシーばかりを使うので、ますます運動不足となる。用事も無いのに一人で家の周りをぶらぶらとするのは気が乗らない。テレビ体操に調子を合わせる時もあるが、その時だけで続かない。

そのくせ御菓子、ことに餡子の御菓子は大好物である。老人会の友愛チームの訪問では、万年堂のお菓子の一箱をいつも頂く。先日は、隣にある幼稚園から「運動会がやかましかったでしょう」と、どら焼きの包みが届いた。

皆さんの好意を感じながら、美味しいお茶と一緒に御菓子を頂くのは何とも言えない満足のひとときである。残り少ない人生。無理して痩せなくて良いかも。



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