秋の一日


友人から、朗読会の葉書を貰い、横浜の近代文学館に出かけた。

横浜は懐かしい。横浜に勤めていた頃、1人で郵便貯金会館(メルパルク)のレストランの窓際に座り、銀杏並木の緑や黄色に変わり行く様や、行き交う女の子達のおしゃれを楽しみつつ食事をした。あと、目の前にある山下公園に出て、季節の花々を眺め、海に浮かぶ船や、遠くの白波の様子を見ながら、気ままに歩いた。その頃は、主人もいて、自分でも感じていたように、その60歳の頃が私の一番華の時代だった様に思う。

菊名から初めての、みなとみらい線に乗って終点の元町・中華街駅で降りた。バスを待たず、タクシーで、坂を上って、外人墓地のそばのレストランへ連れて行って貰う。時計を見ながら食事をする。

朗読会は1時半から4時までだが、出演者10人の中で友人は9人目なので
3時ごろ行けば良さそうだ。



近代文学館のある「港の見える丘」には大勢の人が出ていた。横浜港一望のこの場所から、きらきらと輝いた海の景色を眺める。昔、長男夫婦と此処に来たとき、今27歳になる孫のヨチヨチ歩きを、息子が買ったばかりのカメラで撮っていた姿を思い出す。公園のサルビアがとても綺麗だ。傍の大仏次郎記念会館には前にクラス会等で2回入った事がある。建物の横を通って近代文学館に着いた。

受付で聞くと、私の友人の朗読が今、終わったばかりという。時計を見ると2時40分。友人に会って聞くと、前がどんどん早く進行してしまい予定より30分以上も出番が早かったそうだ。残念だが仕方が無い。休憩を挟んで10番目にある先生の井伏鱒二の「猫」の朗読を聴いた。

帰りはバスで桜木町に行き、始発の横浜線で、快適に、乗りかえ駅の町田に着いた。久しぶりに町田の街に来ると欲が出る。ルミネで文具を買い、本屋でぱらぱらと見て、文庫本を買い、パン屋に寄る。この辺りで体が痛くて杖でやっと歩いていたのだが、一階に下りて成城石井で美味しいと聞いていた紅茶を買う。

目的を全部達して、さて帰ろうとしたが、あまりにも欲張りすぎて自分が疲れ果てているのが判る。もう小田急線まで行かず、目の前の大通りに止まっているタクシーに乗った。

80歳なのだからと交通費の贅沢は自分で許している。(4800円)家の玄関まで、楽に着いて、これで正解だったと思った。

H16/11

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